LANGUAGE

メニュー

サイトメニュー
閉じる
総合トップ江ノ電ファンページ江ノ電博物館当方見聞録第4章 第2回 500形の軌跡(平成16年6月号掲載)
当方見聞録

第4章人気車両快走

平成16年6月号掲載

第2回

500形の軌跡

第4章

 昭和31年8月、鉄道車両近代化の集大成として500形電車が華々しくデビューしました。この500形501号車は、100形ボギー車の台車を流用するなど、基本的な性能は同年4月に就役した300形301号車に準じていましたが、新造する車体のデザインには気を配り、設計にあたっては国内外を問わず当時の最新車両の写真や図面を取り寄せて綿密な検討が重ねられました。
 その結果、車両の顔に相当する前面は、イタリアの特急列者の外観を模した流線型としたうえで、側面にまで回り込んだ曲面ガラスを採用することにより軽快なイメージを強調、さらに開閉可能な窓を多く確保するために両開きドアが採用されました。ちなみに、両開きドアの採用は、営団地下鉄300形に次ぎ全国でも2番目の試みであったようです。また車内にも、テープレコーダーによる自動放送装置やカバー付き蛍光灯が設置されたほか、一部にクロスシートが施されるなど、新造車にふさわしいシチュエーションが演出されていました。



 その後当社は、105~110号車(昭和6年)を皮切りに2代目114号車(昭和28年東京都交通局より譲受)に至るまで15両の100形を増備し、このうち105・107・108・110・111・初代113・初代114・115・116・117号車を除く100形が連接車に改造されました。ちなみに、現存最古参の300形303号車のルーツは昭和4年に新造された103・104号車で、通算車暦はじつに77年に及びます。


 晩年の501号車は、昭和32年に増備された502号車ともども、やむをえぬ事情から車内設備の一般化、あるいは後年実施されたドアの片開き化や前面窓の5面化などにより登場時の面影が失われていましたが、改造後も希少性の高い流線型スタイルは健在で、沿線には同車を目当てにカメラを構える鉄道愛好家の姿も数多く見られました。

 そんな500形が引退のやむなきに至ったのは、平成元年より順次実施してきた300形の冷房化に構造上の問題から追従できなかったためで、すでに高性能化されていた走行機器類を新造の20形に譲り、惜しまれつつも平成14年1月に501号、翌15年1月には502号車が廃車されました。


このように、登場時の意欲的な設計コンセプトを晩年まで維持しかねるなど、500形の顛末は試行錯誤の繰り返しでありましたが、当社唯一の流線型として高人気を得たほか、昭和54年に登場した1000形の寸法上の基礎となるなど、当社車両史のエポックメーカー的存在でもありました。
― 完 -
(参考文献『江ノ電の100年』)

『江ノ電の100年』は、開業100周年記念事業の一環として平成14年9月に発刊された江ノ島電鉄のオフィシャル史料です。400ページにわたるその構成内容は、鉄道以外の事業にも焦点をあてることにより社史としての平準化をはかり、新たに発掘された史料や貴重な写真も多数収録されております。